生活トピックス

散髪

世の中の男性には、髪が伸びてくると無性に気になる人と、大して気にならない人とがいるようだ。僕は前者であり、従って比較的頻繁に髪を切る。月に一回くらいか、二ヵ月放置は珍しい。回数が多い分、出来るだけ安いところを探す。この国に来てからは、髪を切るときはいつも決まって近所のシャンプー&カットで10ユーロの床屋だった。

それがつい先日、出先で髪を切ろうと思い立つ。凄い派手顔と青い目でこっちを睨むブロンドねーさんポスターに怯えつつも、ふと目に付いたちょっと気取ってますふ~の床屋、いや美容室に訂正、に入ってみた。シャンプー付き18ユーロと普段の倍額、一体この8ユーロの差はどんなものか。

まず入り口のドアを開けた時の「カランコロン」が違う、いくつもの倍音が重なり合う豊かな音。行きつけの床屋は同じ「カランコロン」でも、味気無い。その違いたるや指揮者登場前のオーケストラチューニングと音叉一本の「ら~」。
次なる違いは飲み物サービス、「何かお飲みになりますか?」とか訊かれて「コーヒー」とか言ってみる。砂糖とミルク付き、混ぜるスプーン無しで出してくれる、少し後にそれに気づいたねーちゃんは、ドイツ人とは思えない誠実かつ素直な謝りよう。店主のしつけが厳しいらしい、むしろこっちが恐縮した。
でもやっぱり一番違うのは客の注文の聞き方、対応の丁寧さだろう。まず「どう切るか」根掘り葉掘り訊きまくられ、一分毎に「どう思うか」かなーり細かいところの感想を求められ、言葉に関して、今まで「短くしてください」一本やりで通してきた自分としては、非常に勉強にはなるが、疲れる。もし豊富な修飾語でもって芸術的に表現すれば、さぞや立派な髪型になるに違いない。

この店にはカット出来るオジサンが一人、その他に洗髪したり珈琲入れたりしてくれる見習いらしい女性が数人居た。とても熱心な彼女らは、先輩の仕事をすごい間近で観察する。ヘタするとハサミを入れてるオジサンよりハサミに近い位置で、終始見つめっぱなし、いや勉強熱心なのは分かるけど、近い、近すぎ。そーゆー気合入った勉強会みたいのって、マネキンでやらんの?マネキンで?おかげで、こちとら珈琲をすするので精一杯、会話を楽しむ余裕はなかった。

期せずして、床屋ですごくドイツ語に困り、なぜか大勢に見つめられて緊張する羽目になった。もちろんカットそのものの技術にもこだわりを感じたし、実際上手だった、その点はさすが倍額、その他の点はなぜか倍額。この違い、良いか悪いかは個人の価値観によるだろうが、8ユーロ以上の重みがあったことは確実。ちょっと疲れたけど、結構面白かった。床屋に限らず、普段と違う店に入ったり、いつもと違う行動をしてみると、思いもよらない発見があるもんだ。
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LeoNewfie
これまで特に興味を持ったもの…ピアノ、通信、電気、音響、歌、写真、手技療法、東洋医学、ヨガ、デトックス、食、瞑想などを楽しく探求し、仕事でも趣味でもいい、柔軟に形を変えて人の役に立てていく。ご縁ある人の幸せをブーストし、その心に生きた証を残すための喜びの旅を続ける。